葬送の変化 葬儀についての意識
葬儀についての意識
東京都は都民と都内の葬儀関連企業に対して、葬儀つついての実態調査を行いました。
この調査は都民3000人、葬儀関連企業300社を対象に行ったもので、多彩な情報を得ることができました。この節ではそこで得られた情報の一部について紹介していきます。
まず、都民側の実態や意識についてみていくことにします。
回答を寄せてくださった方は全部で2395人で、男性と女性の割合はほぼ半々となっています。回答者の平均年齢は47歳でした。
家族構成は、親と未婚の子どもからなる家族が最も多く約6割りを占めていました。
回答者のなかで、東京で生まれ育ったという人と東京以外から来たという人はそれぞれ半数程度、23区内に居住している人と多摩地区に住む人の割合は7対3でした。興味深いのは次の点です。
家と宗教・宗派についてたずねますと、仏教と答えた人が約70%、無宗派と答えた人は24%弱でした。これに対して、「あなたがふだん信仰している宗教はなんですか」とたずねてみますと、今度は無宗派と答えた人が60%、仏教と答えた人は33%と、結果が逆転してしまうのです。
家自体には宗教があるが、個人的には信仰がないということなのでしょうか。現代社会の宗教と信仰のあり方を端的に表している数値だと考えられます。
葬儀についての考え
次に葬儀についての考えをたずねてみたところ、「故人とお別れをする慣習的なものである」と答えた人が60%でした。
「お葬式は故人の冥福を祈る宗教的なものである」という人は約30%ですから、葬儀を宗教的なものと考える人は少なくなってきているようです。
この傾向は、特に若い人に顕著にみられます。また家族の葬儀を出す場合は「故人の意志を反映したものにしたい」(57%)と答えた人が、「人並みに営めればよい」(30%)を大きく上回っています。
さらにその中身についてたずねてみますと「多少のお金はかかっても、人並みのことは行いたい」(5割)と答えた人と、「親しい人とこじんまりと行いたい」(43%)と答えた人に大きく2分されます。
現実にお葬式を行うとなると「人並みに」という意識はまだまだ強いようですですが、同時に親しい人たちだけで簡素に行いたいという人が4割にものぼるということは、葬儀は立派であるほうがよいという考え方に変化がおきていることを示しています。
いざという場合のために家族の葬儀の準備をしているかどうかをたずねてみたところ「準備をしている」と答えた人は27%「準備をしていない」と答えた人は73%でした。
しかし年齢別にみると、70歳を超えた人たちでは6割程度の人が何らかの準備をしているようです。
具体的に準備の準備の内容についてうかがってみたところ、図2のように「互助会に入っている」「葬儀費用を預貯金している」という答えが多くみられました。
家族の葬儀について
次に家族の葬儀を実際に行った人たちの観点からみることにしましょう。回答者全体の4分の1の人は、この10年間に家族の葬儀を行ったことがあるそうです。
葬儀会場として自宅を用いた人と、自宅以外の会場を利用した人との割合は4対6となっています。
自宅を会場とした人たちの理由としては「自分の家から送りだしてあげたいので」(7割)という答えが群を抜いて多くみられました。
また自宅以外の会場を利用した人の9割は、民間・公営・寺院付属などの斎場を利用しています。会場を外部に借りるのは「自宅がせまいから」「集合住宅だから」など住宅事情による理由が多くみられました。
自宅で亡くなる人が多かった時代には、葬儀は当然のように自宅で行われ、自宅から死出の旅立ちへと故人を送りだしてあげたものでした。しかし、現在ではさまざまな事情から自宅以外の会場を借りることが多くなってきているようです。
また家族の葬儀を行うにあたり、葬祭業者を利用したいう人は9割以上にのぼりました。葬祭業者を利用しなかった人は7.6%にすぎませんでした。前章でも多少触れましたように、かっての葬儀は、地域社会の人びとが力を合わせて行うものであり、葬儀サービスに対する需要はそれほど多くはありませんでした。
しかし、現代社会においては、葬祭業者のサービスなしには葬儀を執行しえないことが理解されます。
葬祭業者の選択では、「互助会に入っていた」「友人・知人の紹介」「病院の紹介」「自分で探した」などさまざまな理由があげられています。
葬祭業者を利用した人のなかには、不快な思いをしたり、トラブルがあったと回答したいます。業者選びは、心のこもった葬儀を成功さっせるための重要なポイントになってきます。
家族の葬儀を実際に行うにあたって、「特にわからないことや迷ったことはなかった」と答えた人も4割ほどいますが、残りの6割の人は何らかの疑問や迷いがあったようです。なかでも、葬儀の段取りや規模あるいは費用についての疑問が多くあげられています。
こうした場合には「配偶者・親・親族などに相談」したり「葬祭業者などに相談」することが多いようです。
自分の葬儀について
次に自分の葬儀について都民がどのように考えているかについて紹介していくことにします。
「ご自分のお葬式のために何か準備していますか」とたずねたところ、全体ではほぼ4分の1の人が準備をしていると回答し、残りの4分の3の人は準備をしていないと答えています。
しかし、年齢的にみてみますと、60代以上の人は準備をしている人が多く、54%の人が準備をしています。
準備の内容について具体的にみると、高齢の方では「葬儀の費用を預貯金している」という回答が多くみられます。
では自分の葬儀は、どの程度の規模が望ましいと考えているのでしょうか。「親しい人とこじんまりと行ってほしい」とする人が全体のほぼ半数を占めています。
しかし「多少のお金はかかっても、人並みのことは行ってほしい」2割という人も少なくはありません。また「行ってほしくない(家族だけで火葬・埋葬してほしい)」と答えた人が1割いるということも、注目されます。
全体としては、葬儀を簡素化したいと考える人が増えているように見受けられます。
自分の葬儀はどのような様式で行いたいかをたずねますと、「形式にとらわれない形で行いたい」(34%)が最も多く、「伝統的な様式で行いたい」(23%)という答えをかなり上回っております。
高齢者のなかには伝統的な様式を望む人も多くおりますが、やはり葬儀は現在変わりつつあることを示す数値といえるでしょう。
また自分の死後に入るべき人墓についてたずねたところ、「自分の先祖の墓に入る」(32%)、「配偶者の先祖の墓に入る」(16%)、「今後家族と入る墓を求める」(14%)となり、現在家墓をもっている人は約3割にとどまりました。
生前葬・散骨・生前予約について
次に昨今話題になっている葬儀に対する新しい考え方についてたずねてみました。
まず生前葬については「知っている」と答えた人が約6割、「知らない」という人は約4割りで、一時期世間で話題を集めたことの影響がみえます。
しかし自分がやるかどうかについては、「関心がない」と「考えたことがない」が全体の約7割を占め、「是非やってみたい」や「機会があればやってみてもよい」と答えた人はごく一部にすぎません。
世間では、散骨の是非についてはおおむね認める方向にあるようですが、自分の骨を散骨することについては、「したくない」が85%と支配的ですが、「したい」とするこたえも14%あります。
散骨をしたいという人にその理由をたずねたところ、「早く自然に帰れる」、「今後はこの形式が望ましい」など回答が多く見られました。
葬儀の生前予約システムについては、「知らない」(86%)という人が、「知っている」(15%)という人を圧倒的に上回っており、こうした制度に対する関心がまだあまり高くないことがわかります。
葬儀の参列について
これまでに葬儀に参列した経験の有無についてたずねたところ、ほとんど人が「ある」と回答しています。
葬儀を経験したことのある人たちのなかで、参列のマナーについて「特にわからないことはなかった」と答えた人は約4割でしたが、残りの6割の人は何か不明なことがあったようです。
それらは香典の金額であったり、宗教上のマナーなどの問題が多いのですが、そんなときに相談にのってもらうのは「配偶者、親、親戚など」がもっとも多く、「友人、同僚、近所の人」「年配者や上司などの経験者」と続きます。
さらに調査時点からさこのぼって、1年以内に参列した葬儀の回数についてたずねてみたところ、平均して、通夜のみ参列が2.4回、告別式のみ参列が1.9回、通夜と告別式への参列が2.1回という結果でした。
全体を平均してみますとい1年間に3.3回はお葬式に参列している勘定になります。
また参列した人について平均参列回数を相手との関係別にみていきますと「仕事関係」が2.8回、「友人・知人」が2.3回、「その他」1.9回のどの順になり、仕事関係の参列回数が多いことがわかります。
さらにこれを参列者の職業別に詳しくみてみますと、経営・管理職の人たちは「仕事関係」に年間平均4.4回のペースで出席していることになります。
また香典返しの慣習についてたずねてみたところ、「慣習を改めていくべきだと思う」(45%)「お返しするのが当然だと思う」(41%)、「お返しの必要はまったくないと思う」(10%)などという回答でした。
香典返しの必要性については、賛否両論があるようです。